上級の奉仕種族
逃げ出さなかったのはさいわいだった。そうでなければ最高気温が四十度にたっした八月のその日の午後、助手席にひとり取り残された十五歳のベティ・モーガンは、パニックが引き起こした過呼吸でもがき苦しみながら、熱中症で死んでいただろう。
救急車が呼ばれ、ベティは保護された。駆けつけた保安官に、ピックアップトラックを運転していた奴はどうしたと訊かれ、彼女はこう証言した。
雲に食われた。
このクリーチャーはアザトースの宮廷に棲む下級の神、雲怪物に仕えている種族である。雲怪物が犠牲者を吸い上げる形で回収するのに対し、サマンシー達はより直接的な方法を持って犠牲者たちを捕まえている。すなわち、自らの手でもって犠牲者を直接掴み、口の中に放り込むという方法である。
サマンシー達の活発化に前後して、人類の一部では見た目上にも大きな変容が現れる。彼らは幼少時より頭頂部に脂肪が集まり、奇妙な突起物が形成される。頭頂部の突起物は成長を続け、傘のような、アンテナのような、もっと正確に形状をたとえるならば、花のような形状をした「器官」として落ち着くこととなる。この「器官」はサマンシーの影響で現れたとも、サマンシーを撃退するための脳波を発しているとも言われているが、実際どういった機能を持っているかどうかは不明である。
攻撃:サマンシーの武器は、その雲さながらの形状には全く似つかわしくない、先端に大きな鉤爪の生えた数百メートルはあろうかという長い腕と、数キロにも及ぶギザギザの歯が並ぶ巨大な口である。こうした物理的な攻撃は、生身の人間ではまず防ぐ手立てはないだろう。
サマンシー、不穏な雲
能力値 ロール 平均値
STR 4D6 + 10 24
CON 4D6 14
SIZ 10D6 + 15 50
INT 1D6 3~4
POW 2D6 + 6 13
DEX 2D6 7
移動 8 耐久力 55~60
平均ダメージ・ボーナス:+4D6
武器:なし
装甲:なし。サマンシーはその雲のような形状に反し、物理的な攻撃が有効である。
呪文:なし。
正気度喪失:サマンシーを見て失う正気度ポイントは1/1D10